債権回収
文書提出命令の対象となる文書はどのようなものですか?
まず,当事者が訴訟において引用した文書を自らが所持している文書は文書提出命令の対象となります(民事訴訟法220条1号)。
これは,訴訟において,文書の存在及び内容を引用した以上,相手方に内容検討や反論の機会を与えるのが公平だろうという考えに基づくものです。「引用」の意義については,争点があるところではありますが,自己の主張を基礎づけるために文書の存在及び内容に言及すれば足りると考えられています。
なお,文書の一部を書証として提出した場合には,その一部だけ提出された文書の残部は「引用」したとは認められませんので注意が必要です。
また,「訴訟において」については,広く含まれますが,和解期日や進行協議期日における陳述の中で言及したにすぎない場合については含まれないと判断されるおそれが高いです。
次に,挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるときには,その文書は文書提出命令の対象となります(民事訴訟法220条2号)。
また,挙証者の利益のために作成された文書も文書提出命令の対象となります(民事訴訟法220条3号前段)。典型例は挙証者を受遺者とする遺言状,挙証者のためにする契約の契約書等です。
そして,挙証者と所持者との法律関係につき作成された文書も文書提出命令の対象となります(民事訴訟法220条3号後段)。典型例は契約書や家賃通帳,売買契約の際に授受された印鑑証明書等です。
最後に,平成8年法改正により文書提出義務が一般義務化されました(民事訴訟法220条4号)。その結果,民事訴訟法220条4号イないしホに該当しない限り,文書提出命令の対象となります。