不動産
家を貸しているのですが,借主が違う人に貸しているようです。出て行ってもらうことはできますか?
最高裁(最判昭28・9・25,最判昭30・9・20)において,「元来民法612条は,賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ,賃借人は賃貸人の承諾がなければ第三者に賃借権を譲渡し又は転貸することを得ないものとすると同時に賃借人がもし賃貸人の承諾なくして第三者をして賃借物の使用収益を為さしめたときは,賃貸借関係を終始せしめ得ることを規定したものと解すべきである。
したがって,賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益を為さしめた場合においても,賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認められるに足らない特段の事情がある場合においては,同条の解除権は発生しないものと解するを相当とする。」と判断し,無断譲渡の場合であっても,信頼関係破壊の法理の適用により解除権は制限されるべきとされています。
もっとも,上記判決文から分かる通り,背信的行為と認められるに足らない特段の事情がないことを賃借人側で立証しなければならないわけではなく,転借人等が背信的行為と認められるに足らない特段の事情があることを立証しなければなりません。
転借人の使用態様や借主と転借人の関係,転貸の期間並びに使用料の有無及びその価額等,様々な事情からして,相手方が背信的行為と認められるに足らない特段の事情を立証できず,そして,賃貸人が転貸借を承諾する意思表示をしたことについても立証できなかった場合には,借主が出て行かざるを得ないこととなると考えられます。