不動産

ペット禁止なのにペットを飼っていた人がいます。信頼関係の破壊は認められるでしょうか?

1 事案によります。

ご参考までに信頼関係の破壊が認められた例と認められなかった例を1つずつ紹介します。

2 まず,信頼関係の破壊が認められた例を紹介します。

多数の居住者のいる賃貸マンションに暮らす人が野良猫に継続的にえさを与えていたケースにおいて,「家屋内の柱や畳などが傷つけられるとか,猫の排泄物などのためにマンションの内外が不衛生になるという事態を商事,あるいは,近隣居住者の中に日常生活において種々の不快な念を懐くものの出てくることは避けがたいし,更には全期認定のように転居の際に捨てられた猫が居ついて野良猫化し,マンションの居住者に被害を与えたり,環境の悪化に拍車をかけるであろうことは推測に難くない」とし「猫の詰めを切ったり,その排泄物の処理については意を用いていたことは全期認定のとおりであるから,それだけでは右特約を遵守しているものとは言い難いし,更に,原告は本件マンションの敷地内でも野良猫に餌を与えたり,あるいは,賃貸借契約書中の記載をほしいままに塗りつぶし,猫の飼育についても被告の承諾をえたかのような工作さえしている」と判断した上で,信頼関係はすでに失われていると認定しました(東京地判昭和58・1・28)。

3 次に,信頼関係の破壊が認められなかった例を紹介します。

10年以上にわたり常時2匹前後の犬を室内で飼育して来たケースにおいて,「犬の種類はペキニーズという体長30ないし40センチ,体重5ないし6キログラムの愛玩用のいわゆる座敷権で,座敷に犬の小屋があり,風呂には月1回入れていることが認められ,食事,排泄物の処理についても訓練が行き届いていることが推認され,犬の飼育によって本件建物内の柱や畳類が汚れたり,損傷した事実は認められず,又,右犬は外部とは没交渉に近いから,本件建物の周辺に野良犬が住み着いて犬の排泄物などのため不衛生になっているとか,そのため近隣居住者に不快の念を懐かしている等を裏付ける証拠はない」とした上,「被告とAとの間に子どもはなく,犬は家族同様に2人の生活の中に溶け込んでいたことが推認され,独り身となった被告にとっては2匹の犬は話し相手ともいえる唯一の慰みとして特殊な感情をもっていることが認められる」ことから,信頼関係が破壊されるにいたったと認めることはできないと判断しました(東京北簡判昭和62年9月22日)。