管理監督者とは何ですか?
管理監督者とは,職制上の役付者のうち,労働時間,休憩,休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない,重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間などの規制になじまないような立場にある者です(昭和22年9月13日基発17号)。
管理監督者にあたるとされれば,労働時間などに関する労基法上の規定の適用を受けなくなります(労基法41条2号)。
管理監督者にあたるか否かは,①職務内容,権限及び責任に照らし,労務管理を含め,企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか,②勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないか否か,③給与(基本給,役付手当等)及び一時金において,管理監督者にふさわしい待遇がされているかなどを考慮し,判断されます。
まず,①事業経営への関与としては,経営会議に出席し,労務管理上の決定権限がなければならないとした裁判例(大阪地判平13・3・26,風月荘事件)や,社内幹部会への出席をしていても経営上の提案まではできていない場合には管理監督者にあたらないとした判例(東京地判平18・8・7,アクト事件)等が注目されます。
これらのことからすれば,会社として,ある人を管理監督者として扱いたい場合,人事考課の最終権限や部下社員の配置権限を付与できないか見直しを行うこと等の対応が必要であり,そういった対応を怠れば,管理監督者性が否定され,労基法の適用を受ける結果,未払残業代等が発生することがあります。
次に,②勤務態様についてですが,タイムカードの打刻をさせていたとしても,それだけで,管理監督者性が否定されるわけではありません。例えば,裁判例(大阪地判昭62・3・31,医療法人徳洲会事件)においては,タイムカードの打刻をさせていたものの,それは給与計算上の便宜にすぎず,出勤日における実際の労働時間は自由裁量により決定することができたと判断されました。
会社としては,欠勤控除を行わない旨,給与規定において明確化したり,タイムカードを押させるのであれば,総労働時間の把握のため等であることを明確にしておく等の対応が必要となります。
最後に,③待遇ですが,給与の金額の多寡で絶対的に決まるわけではありません(東京地判平14・3・28,東建ジオテック事件)。
もっとも,ある程度優遇しなければ,管理監督者性が否定されかねません。
たとえば,前褐のアクト事件においては,月収31万円であった点も管理監督者性が否定された要因の一つでした。
会社としては,管理監督者の人たちの平均年収を被管理監督者のそれより高く設定する等の対応が必要となります。