国際法の話1

領海とは何か

近日,某国の漁船が我が国の排他的経済水域や領海内で,サンゴの密漁を行っていると報道されています。

私は,大学時代から国際法に興味があったので,このような報道を目にすると,国際法的にはどうだったかな?と復習してみたくなります。

そこで,本日は,領海について,お話をします。

国家の領域は,主に領土,領空,領海に分けることができます。このうち,領土はまさに国の土地の部分であり,領空は領土と領海の上の大気圏内を指します。

領土,領空は,いずれも自国の許可なく踏み入れることが許されない領域です。いわゆる第三国の飛行機が勝手に侵入すると「領空侵犯」として問題となり,警告を発しても領空外へ出ない場合には,最悪撃墜されることも想定されるため,国際問題となります。無断で絶対に立ち入ってはいけない領域,それが領土・領空なのです。

他方で,領海は,領土からおよそ12海里(約22km)までの距離の海上を指します。この領海は,領土や領空とは異なる概念です。どのように異なるかというと,他国船の無害通航を甘受しなければならない点が異なります。

他国船の無害通航とはその文字どおり,領海国の平和・秩序・又は安全を害しない航行のことをいいます。つまり無断で立ち入ったとしても,それは「領海侵犯」とは言えないのです。

では,冒頭のニュースのような,密漁行為がなされている場合はどうでしょうか?明らかに「無害な航行」とは言えません。我が国も批准する国連海洋法条約においても「無害でない航行の例」として「漁獲活動」が挙げられています(19条2項(i))。したがって,このような行為について我が国は領海における主権行為として,密漁行為を取り締まることができ,警告や拿捕が国際法上可能になるのです。